北上川に飛来したオジロワシとハクチョウ(撮影 一関市・横田実)

 植物、水生昆虫、魚、渡り鳥、水鳥など、北上川流域には数え切れないほどの生物が生息している。

 植 物
 北上川流域で広く見られる植物群落は、ヤナギ群落、オニグルミ群落、ヨシ群落、オギ群落などである。
 ヤナギ群落やオギ群落は、川が氾濫すると水が浸るような一帯に発達している。ヤナギは川岸に根を張ることで護岸の役目も果たしている。石川啄木が「やはらかに 柳青める北上の…」と詠んだように、北上川は上流から下流まで共通してヤナギが多い川でもある。
 北上川が津山町で旧北上川と二手に分かれ、追波湾に注ぐ河口の河川敷には、数キロにわたってヨシの大群落が続く。これは日本の川の中では最大級の規模。流域の町では12月中句からヨシ刈りが行われ、冬の風物詩となっている。
 オギは、ヨシよりやや高い湿地に生えていて、10月には白い穂を風になびかせる。ススキとよく似ていますが、山の植物であるススキのように株を作ることはなく、1本ずつ生えているのが特徴である。

 魚 類
 北上川を泳ぎ回る魚たちも、淡水魚から海水魚まで実に多種多様である。
 なかでも特筆すべきは澄んだ水にしか棲まないとされる「カジカ」の存在。カジカは本州と四国に多く見られ、体長は15センチ程度。川の中流から渓流域の石の多い瀬に棲み、水生昆虫や小魚を食べる動物性の魚である。
 北上川では松尾鉱山の鉱毒水による水質の悪化などが影響し、生息数は減少しつつありますが、平成2年度〜7年度の「河川水辺の国勢調査」の採取調査では、生息が確認されている。
 また、北上川の上流、岩手県盛岡市の中心部では、晩秋になると産卵に上ってきたサケを見ることができる。街の中心部でサケのそ上が見られるというのは、全国的にも珍しい。

 鳥 類
 北上川流域では、冬になると各地で白鳥などの渡り鳥が見られる。中でも宮城県の伊豆沼・内沼は、ラムサール条約(国際湿地条約)に指定登録されている名所。南北に広大な流域を持つ北上川は、渡り鳥のルートとしても重要な役割を担っているわけだ。

 昆 虫
 ヒヌマイトトンボは、真夏に気温の高い場所の足元を飛ぶ、体長わずか3センチ足らずの小さなトンボ。太平洋沿岸でヨシ原など生育する湿地に生息するが、全国的なヨシ原の減少などにより、絶滅が危惧されている。近年、北上川河口のヨシ原で確認され、生息の北限と考えられている。

 北上川の主な動植物
 植物
 イヌセンブリ
 ミクリ
 オオアブノメ
 タコノアシ

 鳥類
 ヒシクイ
 カワウ
 ミサゴ
 ヤマセミ
 ハヤブサ
 マガン
 コハクチョウ
 オオタカ
 カワセミ
 ハギマシコ
 オオワシ
 ヤマセミ
 ハイタカ
 オシドリ

 両生類・ほ乳類など
 トウホクサンショウウオ
 モクズガニ
 テン


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